「イタタタタ、腰が」
「珍しいですね、社長が」
「だよね。ゆうべ、温泉に、ドップリ浸かったのによ」
「あっ、ストレッチ!やってませんね?」
「出発の日から、3日やってねぇよ」
「普段は欠かさずでしょ、なんで八郎では?」
「3年前までは、ここに来ても、やってたんよ」
「えっ!何か理由が?」
「寝る!さっさと、だね」
「ははははは、またわかりやすいですねぇ」
「オレ、ストレッチとゴリゴリマッサージで、40分はかかるんよ」
「念入りにですか」
「そう、年寄りだから」
「ははははは、いやいや、それは単に年齢が…でしょ」
「カブだよ、充分な年寄りだろ?」
「はぁぁ?野菜?じゃなくて」
「6、3のカブ、おいちょかぶだよ。同じカブでも、3、6ん時とは、だいぶ違う」
「…? あのですね、僕の勤務先にもいますよ、社長並みの年齢の方達が」
「定年が伸びてっからね」
「ええ。多くは50台ですけど、全然違いますよ、社長と」
「ほう」
「ははは、須田さんですか。あの方も、若々しいですが」
「そりゃぁ、山田君は、にょしょう道を邁進中だからね、50過ぎた今でも」
「ははははは、良い道です。でも、社長の方が過激ですよ」
「なんでよ?」
「スノーボード、スケートボード、ですよ。職場の先輩方には、絶対無理」
「あぁ、それなぁ、回数激減中だけどね」
「だいたい、普通に滑ってないし」
「余計なことばっか、してる?」
「ええ、その歳で、パークには行かないでしょ」
「そうねぇ、会ったことは無いかな、同年代には」
「それに、武道も」
「そっちは休憩中だよ」
「に、してもですよ。で、ストレッチですけど、軽く開脚だけやれば」
「おお!股割りかぁ、それなら早いし、腰にも良いわなぁ」
「ええ、来年はそれで。僕も、またご一緒しますんで」
「なんですと〜!うれしいねぇ!」
「ええ、楽しかったですから、昨日まで」
「おお、きょうは、更に楽しいよ、釣れちゃう野池めぐりだから」
「ええ、でも、昨夜の地震が影響が」
「あぁ、震度4だってなぁ。電話がビィービィー鳴って」
「ええ、地震警報でした」
「そうそう、『地震くるから、気をつけろ』って、はぁ?どうすりゃいいのよ?」
「社長、寝ちゃいましたよね」
「寝るよ、気をつけようがねぇし」
「その後きましたよね」
「おっ、きたねホントに…って、思ってたら、意外にデカかった」
「宿のお母さん、とんできましたよ」
「大丈夫ですか〜!!って、かなりテンパってた。
むしろ、お母さんの方を、心配したよ」
「ええ、まったく」
「『平気で〜す、関東人は、なれてま〜す』で、安心したみてな」
「ははは、でしたね」
「おお、着いたで!」
「静かですネェ」
「♪♪静かな湖畔の森の影っから♪♪はい」
「えっ?はいっ?あっ、♪♪静かな湖畔の〜♪♪」
「いいねいいね!そのノリが大事」
「初日とは、大違いですね。スゴく釣れそうですよ」
「はい、ドンドン、いってみよ〜」
「社長!入れ食いで〜す」
「こっちもだよ〜」
「どう?」
「もう!堪能しまくり!何年分釣ったか、わからないくらい!」
「よしっ!次、行ってみよ〜」
「ウゥ〜!たっのしい〜!!」
「社長、僕は大満足です!」
「結構!おおいに結構。撤収すっか、ちょいと早ぇけどよ」
「はい、そうしましょう」
「燃料入れて、高速乗るから」
「運転は、僕におまかせください」
「いいの?んじゃ、頼むよ」
あとがき
『いらっしゃいませ〜』
「こんにちわ。レギュラーをフルで、現金払いです」
『はい!』
「じゃ、これで」
『ありがとうございます。バス釣りよね?』
「はい、埼玉からきました」
『この上の池、行った?』
「はい、行きました。それと、反対側の藻がある池も」
『釣れたでしょっ!?』
「はい、そりゃもう、関東とは大違いですね」
『アハハハハ、ネェ、いいでしょう、また来てね』
「もちろんです」
『ありがとう〜』
「歓迎されてますよね、社長?」
「ここは、3年連チャンで利用してっけど、毎回『歓迎!バス釣の皆さま』の、
のぼりを立てた方が、いいんじゃねって、くらいだよ」
「ははは、確かに」
「釣果はイマイチなんだけど、来たくなる」
「歓迎と言えば、ホテルのみやげ物売り場でも、そんな感じでした」
「21年だからね。泊りは減ったけど、売店の利用は欠かしていないよ」
「社長のこと、知ってるみたいでした」
「あぁ、それは話が出るんだってよ、毎年。『そろそろよね、あのお客さん』って」
「ははははは、スゴイです」
「3、4年前だったかな、言われた。おみやげ、箱買いだからじゃね」
「なかなか、いませんよね」
「おそらく。うまいから、だんだん数が増えてさぁ」
「僕もいただいた時、ビックリしました」
「もらった人も不幸だよね、ここでしか買えなかったから」
「ええ、まったく」
「今じゃ、楽天で買えるけどさ。それまでは、ホテルに電話して、
事情説明し、売店につないでもらって、また買う」
「そんな事してたんですか?」
「そう。面倒臭いったら、ありゃしないんだけど、喜ばれるんでよ」
「社長、八郎、じゃ、アレが…って」
「前はガンガンに釣れたから、『おみやげ買って帰ろ〜』って、気分良く」
「それが、今では」
「旅行に来たから、おみやげ買う、釣りもしてみたよ…かな」
「ははははは、本末転倒ですね」
「いいんだよ、釣れなくっても、八郎潟!空が近く見えるくらい、気持ちがいい!」
「ははは、雨だったら?」
「言うな!オレは、強烈な雨男なんだから!」
「僕も解りました。毎年、八郎潟な訳が」
「だろ。もはや、恒例行事だしね」
「僕も、可能な限り参加で」
「承知!って言うか、頼むよ、ひとりはさみしい、『劇団』じゃないから」
「ははははは、そうきましたか」
「親父ギャグも恒例行事。ど〜れ、帰るべ」
「はい!運転は、おまかせください」
「言ったなぁ、しらねぇぞぉ〜、オレ、爆睡だで」
「ははははは、来る時も、そのまんまでしたから、ご安心ください」
「おお!心置き無く!こりゃ、是非とも、毎年だな」
「いえいえ、可能な時は、です」
「らしくてイイね。さて、恒例行事無事終了。
来週からは渓流復帰の巻。お楽しみに〜」
「いや〜!楽しかった〜」