アタシはアメリ。
みなさん、お変わりありませんか?
「今年の暑さは尋常じゃニャイ!」
と、去年も言っていました。
が、それどころじゃニャイ、今年。
災害も多く、被災された方々には、お気の毒としか、
言いようがありません。
一刻も早い、復旧復興を願うばかりです。
そんなある日……
「よう!アメッチョさん、溶けてるね」
「ニャウ(まったく、デリカシーのかけらもありゃしない)」
「がははは、毛皮族にはツライね、今年も」
「ンニャ。(アンタがおかし〜んだ。嬉しそうだし)」
「うん?なんか言ったかい?」
「ンニャ。ニャンにも言ってませんが」
「見せたくないもんが、家の前の木にあるから、来ないでよ」
「ハァ〜?だったら言わニャイでよ。だいたい、
そんな言い方されたら、行きたくなる」
本日登場の方
アメッチョ 「ニャゥゥゥゥ…ツライ」 |
お母さんキジバト 「テデポッポ〜(お初で〜す)」 |
「ニャッニャッ!ウニャニャニャニャ」
「あれ?アメッチョさん、来ちゃったの」
「来るでしょう、普通に。あんな言い方されれば」
「で?見つけちゃった?」
「ウニャニャニャニャ〜!」
「本能が目覚めちゃったわけかい?」
「ニャス。けど、今回は理性が勝っちゃったニャン」
「ほう、その心は?」
「この木は歩道にあるでしょ」
「あぁぁん、車が嫌なわけだ」
「ニャス。来ないんだろうけど、イヤ。
それに、木に登った帰り、しくじって車道に」
「あぁ、可能性はあるわなぁ、おぬしの場合。がはははは」
「笑うとこじゃニャイ!」
「失敬。キジバトのヒナさん、ご安心ください。アメッチョさんは、
あたたかく見守るそうです」
「ンニャ!見守るもなにもない!ココにこニャイ!」
「結構!おおいに結構!」
「社っ長はいったい?」
「あぁ、『なにしてんの?』って、わけ?」
「ニャス」
「電線に止まってる、お母さんキジバト見てた」
「そらまたニャンで?」
「どうやら、ヒナの、その後が心配らしいい」
「ニャウウ、生き物の親は、みんな一緒ニャンだ」
「ハイ。アメッチョさんの見守りのおかげか、飛行練習してたのよ、最近」
「ニャッンと!もう?」
「ハイ。母バトと一緒に数日。その後は単独で」
「ニャウ」
「まだ慣れてないからか、チョイチョイ、家の木とか庭で、休んでたのよ」
「見てたんだ」
「たまたまね。すると。お母さんハトが隣にきて、
しばらく寄り添って、なんか言ったのよ、クルルルル〜って」
「ニャウウ、一本立ちだニャ、それは」
「たぶん。その翌日だよ、小鳩が庭にいたから、
声かけたんだよ『がんばってるかい?』って」
「ニャウ」
「『見てよ飛びっぷり!』とばかりに、外へ飛び出したんだよ」
「ニャウ、ニャウ」
「で、オレも歩道の木、見にいったのよ、元の巣で休憩?と、思って」
「疲れるんだろうからニャァ」
「だよね。でも巣には居なくて、違う所にいた」
「?」
「道路」
「ニャ!?」
「飛び出した後に、車と衝突した」
「!!」
「低空飛行だったんじゃね、きっと。
危険度が身について無かったろうし」
「ニャ、ニャンと!で?」
「即死。オレ、なんかさぁ、責任感じちゃったよ。
声かけたらピュ〜ンと行ったから」
「いやぁ、それは…で、その後は?」
「ひかれちゃならんと、店に連れてきて、
お客さんや岩崎君にも、見てもらったのよ」
「ニャウウ…」
「なんともはかない命だったよなぁ。ねんごろに弔ってあげたよ」
「ニャンとも、悲しいお話で」
「ハイ。しかも、ああやって、毎日お母さん見にくんのよ。
『クルルルル〜』って」
「ツライね」
「はい、まったく」
「きょうも来てんだろ」
「ニャウ」
「昔さぁ、『岸壁の母』って、歌があってよ、同じだなぁ、と思っちゃうよ」
「それは?」
「戦地から帰って来る船を、毎日迎えに来る母者の歌」
「悲しい話?」
「おそらく。オレも子供だったんで、興味もなかったんだよ」
「・・・」
「懐メロとかでやってると、オレの母親は見るわけよ。
親父はまったく見なかったけど」
「?」
「思い出したくなかったんじゃね、戦争の事」
「ニャウウ」
「いやいや、スマン。シメっぽくなっちゃってさぁ」
「ニャァ、ま、事実だから」
「そう、妄想じゃないよ」
「ウニャニャニャニャ〜、社っ長の得意技」
「今回は違います…って、毎回実話だよ!多少のツクリはあるものの」
「ウニャニャニャニャ〜、多少?」
「ウゥゥん、若干、少々」
「おおむね!って、噂だけど」
「いやいや、おおすじだよ、大筋」
「ウニャニャニャニャ〜。みなさん自然界の厳しさですね」
「がはははは、って、アメッチョさんも、気をつけてくれよ」
「ニャス。ところで、『ねんごろに』って、どこに」
「ああ、家の垣根の所さ」
「ニャンですと〜!あそこには、歴代の先輩たちが」
「ああ、そうね、今頃にらみ合いしてっかもよ」
「ンニャ、あの世とやらで、仲良くニャン」
こんな話を聞かされたし、暑いし、外には行かない!
つもりが、本能のままに、ついつい。
アタシはアメリ。
キョトン顔だけど、実は用心深いネコ。
「そうそう、年を重ねて!だろ。13歳目突入だし、がはははは〜」
「フゥゥゥゥ」